売買契約書の基本用語②「公租公課の精算」と「起算日」について
売買契約書に記載されている公租公課の精算や、それにまつわる起算日についてご説明します。
「公租公課の精算」
公租公課(こうそこうか)
公租公課とは、公の目的のために国や地方公共団体に納める負担金の総称です。
公租とは、国税や地方税などの租税を指し、公課とは、それ以外の負担金のことを指します。
売買契約書で言う公租公課は、固定資産税や不動産取得税、都市計画税のことになります。
「租税公課」と呼ばれることもありますが、こちらは租税に法人税が含まれています。
公租公課の精算
公租公課の精算とは、いわゆる固定資産税などの精算ということです。
売買契約書の中では、「公租公課の分担」という項目になることがあります。
固定資産税などの納税義務者は、土地や建物に関する登記に関係なく、その年の1月1日に、固定資産課税台帳に登録されている人ということになっています。
そうすると、いつ不動産の売買を行ったかに関わらず、1月1日にその不動産を所有している人、つまり売主が1年分の固定資産税を払うということになってしまいます。
そのため、売買契約では、売買する土地にかかる公租公課は、土地の引渡し日の前日までは、売主の負担となり、それ以降は買主が負担することになっています。
引渡し日当日をどちらの負担とするかは、買主分になることが多いですが、売主の負担として扱うこともあります。
そしてその内訳は、税金の年額を月割や日割りにして、それぞれが精算することになっています。
その精算方法は、買主が自身の負担分を売主に渡し、売主がまとめて一年分の納税を行ったり、仲介会社が売主と買主それぞれの負担分を預かり、まとめて支払いを済ませるというケースもあります。
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「起算日」
起算日
起算日とは、公租公課が発生する一年分の始まりの日のことです。
公租公課を日割り計算して、買主・売主で分担して精算するために、公租公課の起算日を明確にしておく必要があります。
この起算日をいつにするかは、2つの考え方があります。
ひとつ目は、暦に合わせて1月1日を起算日として12月31日までの期間とすること。
ふたつ目は、会計年度に合わせて、4月1日を起算日として、3月31日までの期間とすること。
このうちどちらを起算日とするかは、特に決められているわけではないので、契約書を作成する不動産業者などによって決定されます。
関東では、1月1日を起算日とすることが多いようですが、他の地域では、4月1日を起算日とすることが多いようです。
起算日による負担額の変化
起算日を1月1日にするか4月1日によするかによって、売主・買主の負担する分量が変わってきます。
たとえば、5月1日を引渡し日としたとき、起算日が1月1日なら売主の負担分は約4ヶ月分、買主の負担分は約8ヶ月分になります。
逆に4月1日を起算日としたとき、売主の負担分は約1ヶ月分、買主の負担分は約11ヶ月分になります。
ただ、売主は引渡し日までの税金をすでに負担していることになるので、起算日がどちらになっても、支払う税金は引渡し日までと考えれば総計では変わりません。
引渡し日が10月や11月など起算日の前になる場合は、すでに納税してあるその年の納税額の一部を買主に負担してもらうことになります。
納税通知書
起算日をどちらにするにしても、納税通知書は、4月以降に売主に送られてくることになります。
そのため、売買が行われる日や引渡し日によっては、納税額がはっきりせず、公租公課の精算は後日になる場合もあります。
もしくは、前年の納税額を元に日割り計算して精算することもできます。
その場合、実際の納税額と若干の差が生じることもありますが、契約時にしっかり話し合い、売主・買主ともに納得できるような方法を取りましょう。
また、起算日を4月1日にしたとき、引渡し日が1月2日から3月31日の間にあった場合、公租公課の精算をしたあとの4月以降、納税通知書が売主のところへ届けられます。
すでに不動産の所有者は買主となっていますので、その納税義務は買主にあります。
そのときの対応をどうするかについてもあらかじめ決めておいたほうがいいでしょう。
すべての取引が終わった後なのに、またすぐ納税しなくてはならない買主の心情も複雑ですが、すでに所有していない不動産の納税通知書が届けられる売主の心情もあまり良いものではないでしょう。
買主がそういったことも考慮して、すみやかに納税額を振り込むなどの対応をするのが、トラブル回避のためにも必要になります。
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公租公課の精算で気をつけること
公租公課の分担精算は、法的な強制力はありませんが、ほとんどの売買契約で行われていることなので、円滑な取引を進めるためにも、売主・買主で協力するようにしましょう。
公租公課の起算日などによって、負担分や取引後の対応まで関わってくることもありますので、起算日をどうするか、契約日当日をどちらの負担とするかなど、細かい部分まで明確にして、後々トラブルにならないようにしましょう。
記事執筆者:西 恭平(不動産業歴17年・宅地建物取引士)
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西 恭平
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