売主になるなら覚えておきたい「売買契約書」15のポイント(後編)

売主になるなら覚えておきたい「売買契約書」15のポイント(後編)

 

さて、いよいよ後編。ラスト5つのポイントも見逃さずにチェックしていきましょう。

 

ポイント11 手付解除に関する項目

 

手付解除とは、理由に関係なく売買契約を解除できる手段。“手付倍返し”や“手付放棄”と言う人もいますが、形式上では手付解除と記述されるのが一般的です。

 

買主が手付解除するときは、手付金を返金してもらわないことを条件に売買契約を解除できます。つまり、手付金が戻ってこないというわけです。

 

売主が手付解除するときは、すでに支払われている手付金の倍額(2倍)を買主に返金しなければなりません。手付金の額が大きければ大きいほど2倍になると負担も大きくなりますね。

 

また、個人間(売主と買主が個人)の売買契約では手付解除の有効期限を契約書に記すのが通常で、手付解除が有効となる期日を定めておく場合がほとんどです。

 

第○条 手付解除

理由を問わず、売主は手付金の倍額を買主に支払うことで本契約を解除できるものとする。買主は、支払い済みの手付金を放棄することを条件に本契約を解除できる。ただし、どちらか一方が本契約の履行に着手したとき、または表記の期日を経過した場合には、手付解除の解除権は行使できないものとする。

 

ただし、売主が不動産会社や仲介業者(宅地建物取引業の資格取得者)の場合、定められていた期日を過ぎたとしても手付解除できます。

 

なぜなら、売主が宅地建物取引業の資格取得者である場合、有効期限を定めること自体が無効だからです。買い手が宅地建物取引業の資格取得者である場合も同じく無効です。

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ポイント12 契約違反に関する項目

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売買契約を違反する事柄(支払いの不履行など)が発生した場合、売買契約を解除できると同時に違約金の支払い義務も生じます。

 

あらかじめ違約金(損害賠償)の額面を設定し、売買契約書に記述しておくことでトラブルを防ぐのが目的となります。

 

違約金の額面は公序良俗の範囲内であれば売主と買主の当事者間で決めることができますが、ほとんどのケースでは不動産会社や仲介業者が定めるのが一般的です。

 

第○条 契約違反による契約の解除

売主または買主いずれかが本契約に定める義務を履行しないとき、履行しない者に対して本契約の解除を催告し、そのうえで本契約を解除できるものとする。さらに違約者に対し、売買代金の20%を違約金として請求することができる。

(1)売主が違約した場合、上記で定める違約金を買主に支払い、手付金など受領済みの代金についても返金する。

(2)買主が違約した場合、上記で定める違約金から手付金など支払い済みの代金を差し引いた額を支払うものとする。ただし、違約金の額面が支払い済みの代金を下回る場合、売主は差額を買主に返金しなければならない。

(3)売主または買主いずれも本契約の解除に伴い違約金の金額を超える損害が生じても、違約金を超える金額は請求できないものとする。

 

上記のように、物件の売買代金に対し20%の違約金が設定されている場合が多いようです。違約金に関する事項は重要なので、売買契約書を交わす際は見落とさずに確認しましょう。

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ポイント13 融資の承認(住宅ローン)に関する項目

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買主が融資を受けて売主から物件を購入する場合、もし住宅ローンの審査に通らなければ大きなトラブルに発展するおそれがあります。

 

そうした状況を想定し、予め売買契約書で取り決めておく項目が「融資利用の特約」です。

 

融資利用の特約が売買契約書に記述されていない場合、たとえ融資を受けられなくても買主は売主に売買代金を支払わないとならなくなります。

 

支払いができなければ契約の不履行となり、買主は違約金を支払う義務が生じます。トラブルを回避するためにも、必ず「融資利用の特約」が記述されているか確認しましょう。

 

第○条 契約違反による契約の解除

買主は本契約の締結後、速やかに表記の融資に関する申し込み手続きを行うものとする。

(1)表記の融資承認予定日までに、融資の全額もしくは融資の一部金額において承認が得られなかったとき、表記の契約解除期限を過ぎていなければ買主は本契約を解除できるものとする。

(2)本条項により本契約が解除された場合、売主は手付金など支払い済みの代金を買主に返金するものとする。

(3)買主が自己の理由により融資の承認を妨げる行為を行った場合、買主は本契約の解除権が行使できなくなる。

 

上記の「承認が得られた」とは、「審査が通った」ということ。ですから、「非承認または承認が得られなかった」の意味は、「審査が通らなかった」という解釈になります。

 

また、非承認は、ただ単に審査が通らなかった場合だけでなく、全額が承認されず一部しか借りられなかった場合(一部承認)や、申し込みした複数の金融機関のうち断られた金融機関がある場合も非承認に該当します。

 

そして「表記の融資に関する」については、買主が申込む住宅ローンの詳細が細かく記されているのが理想的で、売主も把握しておくことが大切です。(金融機関名や支店名、借入れ金額や金利、返済回数や返済方法など)

 

万が一、住宅ローンの審査が通らなかったときのことを考え、「契約解除期限」は余裕をもって設定しておく必要があります。

 

住宅ローンの承認が得られなかった場合、買主は期限内に売買契約を解除しなければ売買代金の全額を売主に支払う義務が生じるため、とても重要な確認事項となるでしょう。

 

ポイント14 売却後のトラブルを回避する項目

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売却する物件に関する全ての情報を、売主は買主に伝える必要があります。その内容を買主が理解しておくように記述しておくのが売買契約書における「諸規定の承継」です。

 

第○条 諸規定の承継

売主は本物件に関する、環境の維持または管理の必要性が求められる諸規定や義務の全てを買主に承継させ、これを買主は承継しなければならない。

 

たとえば建物に関する規定や建築協定、近隣との取り決めや管理規約、使用細則など法的な要件だけでなく、その土地や建物を所有するうえで知っておくべき全ての情報を伝える義務が売主に生じます。

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ポイント15 紛争に関する項目

 

売買契約書で全てのトラブルをカバーできるわけではありません。ときには、予想し得なかった事態が起こり、売買契約書の範囲を超えるトラブルに発展する可能性もあります。

 

そこで必要になってくる項目が「規定外条項の協議」と「管轄裁判所」です。不動産売買に限らず、あらゆる消費契約書に記述される重要な項目となります。

 

問題やトラブルに発展したときは、お互い“誠意”をもって話し合うことを約束するための確認事項のようなもの。とても大切な取り決めです。

 

第○条 規定外条項の協議

本契約に定められていない事項が生じたとき、または解釈に疑義が生じた事項については、区分所有法ならびに民法、その他の関係法規、不動産取引の慣行に従い、売主と買主が互いに誠意をもって協議し、これを解決するものとする。

 

第○条 管轄裁判所

売主と買主の間で本契約に関する紛争が生じた場合、本物件の所在地を管轄する裁判所を、売主と買主が合意する裁判所とする。

 

当事者間の協議で解決できる範囲を超えるトラブルが起きた場合、予め裁判所の場所を決めておくための項目。また、契約書によっては、「○○裁判所」とピンポイントで指定するケースもあります。

 

売主になるなら覚えておきたい基本!

 

さて今回は、前編・中編・後編の3部にわけて売買契約書のポイントをチェックしましたが、ほかにも売買契約書には様々な項目(条項)があるので見落とさないように注意しましょう。

 

  • 登記簿売買における売買対象面積
  • 付帯設備の引き渡しに関する取り決め
  • 買替え特約に関する項目
  • 実測売買における売買代金の精算
  • 抵当権(担保権)の抹消に関する項目
  • 契約解除に関する解除条件型と解除権留保型の違い

 

さらに、「重要事項説明書」の記載と食い違う内容が売買契約書に記述されていないかもチェックしましょう。もし相違する点があれば、速やかに指摘して説明を受けるのが正しい対処法です。

 

重要事項説明書とは、売買契約を締結する前に宅地建物取引士から渡される、物件や契約内容に関する重要な事項が記載された書面になります。

 

契約書は難しい言葉や複雑な言い回しで堅苦しいイメージですが、どんな意味があるのか全く分からず理解しないままサインするのは好ましくありません。

 

ましてや、不動産会社や仲介業者など他人が作成した契約書ですし、どのような内容や取り決めが書かれているのか把握しないまま契約を結んでしまうのは危険ですよね。

 

売主になるなら売買契約書を理解することは基本。“知らなかった”では取り返しのつかないこともあるので、契約を結ぶ前には必ず注意深く確認しておくことが大切です。

 

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