不動産の売買トラブルを防ぐために「物件状況告知書」は有効か?
不動産の契約においては、いくつか重要な書面があります。それらの説明を受け、内容を理解したうえで、売主と買い手が承認することによって契約が成立します。
その契約書の中で重要な書面が「売買契約書」と「重要事項説明書」で、売買契約書は民法を基準とした売主と買い手で交わされる「約束事」を主旨とした書面です。
重要事項説明書は、買い手に対する「不動産に関わる法規制」や「インフラの整備状況」などの情報を記した書面となります。
この2つの書面の重要性については一般的にも広く認識されており、また、ほとんどの不動産会社(以下、業者と表記)で統一の書式・文言が採用されており、一定の信用性もあると言えるでしょう。
そして、売買契約書と重要事項説明書のほかにも注意を払って頂きたい書面があります。それは「物件状況告知書」という書面です。
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売却後のトラブル予防のために
売主と買い手の間でトラブルが生じた場合、売買契約書と重要事項説明書に記載された内容がトラブルの原因であれば、訴訟や弁護士を通して解決することになります。
しかし、トラブルのすべてが契約書の内容に原因があるとは言えないケースもあります。たとえば、マンションの漏水で下階に損害が発生していたり、一戸建てがシロアリ被害などのケースなど。
売主から告知が無ければその事実は伏せられたまま書面に記載することができないため、法的な対応では限界があり、買主はその事実を知らずに物件を購入することになり、入居後にトラブルとなるケースがあります。
さらに、事故物件などの「心理的瑕疵」が伴う不動産は、その事実を告知する義務がありますが、何も告げずに契約してしまい、後になってから判明してトラブルに発展するケースなども見られます。
このような売主の告知事項については、契約書や重要事項説明書に明確な記載が無いため、なかには「聞かれなかったから言わなかった」などと言い訳して逃げ切ろうとする売主もいたりします。
しかし、黙っていてもバレます。心理的瑕疵についても、近隣の噂などから遅かれ早かれ判明してしまいます。
告知しなかった事が明らかになれば、相応のペナルティが売主に対して課せられることになり、ちょっとした出来心や怠慢のために大きな代償を払うことになってしまうのです。
物件状況告知書とは?
契約書や重要事項説明書に明確な記載が無いことがトラブルを招く要因の一つ。そこで、多くの業者は、売買契約に際して「物件状況告知書」という書面を売主に記載してもらうようにしています。
<基本的な告知部分>
土地・建物に関する被害、不具合、障害となる事柄
過去の補修・修繕の履歴
周辺環境に関する事(騒音、振動、臭気、嫌悪施設の有無)
土壌汚染の可能性
近隣の建築計画
電波障害の有無
近隣との申し合わせ事項(約束事)
その他(事件・事故・火災等)
建築・修繕・調査に関する資料の有無
<土地に関する告知部分>
土地境界に関して把握している事
シロアリ・雨漏りの履歴
アスベスト使用の有無、または調査の履歴
増改築の有無
配管に関して把握している事
耐震診断の履歴
地盤沈下、軟弱地盤の認識
物件内の残存物の有無
<マンションに関する告知部分>
管理費・修繕積立金等の変更予定
大規模修繕の予定
給排水管の故障
漏水の履歴
これらの事項に対して、売主は嘘偽りなく回答するようにします。万が一、虚偽や事実と異なる回答をした場合、損害賠償等のペナルティが課せられる可能性があります。
売契や重説と違って法的拘束力がないとは言え、売主が記載した“書面”である以上、物的な証拠となるからです。
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売買契約書だけでは足りない
「物件状況確認書」によって、物件に関する事実をより深く把握することが可能となりますが、物件以外の設備までは、物件状況確認書で明確にしていません。
建具の不具合や給湯器の故障、フェンスの破損などの部分が該当します。それらの状況については、物件状況確認書とは別に「付帯設備表」という書面でトラブルを防ぐことができます。
「付帯設備表」の目的は、現況がどうなっているかを告知する書面であるため、不具合や破損している箇所の補修については、必ずしも売主が責任を負うとは限りません。
もし、補修を要する箇所があった場合、その負担の所在については、契約時までに売主・買主との間で取り決めをする事になります。
入居後に不具合が発生すると、引越し早々に、買主は不便な生活を強いられてしまいますし、売主にとっても、取引が終わった途端のトラブルは、面倒で不快な思いをする事になります。
そのような思いをしないよう、売主は責任ある引渡しを、買い手は告知内容の認識と確認をしっかりと行う必要があるわけです。
不動産の売却で契約を交わすときには、売買契約書・重要事項説明書・物件状況告知書・付帯設備表の4つ書面の重要性を理解しておきたいところです。
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