不動産を相続する前にやっておきたい生前からの対策
相続は親から子へ、大事な財産を受け渡していくことです。
とてもありがたいことですが、相続する人にとっては、相続税のことなども考えなければなりませんし、少々悩ましい問題でもあります。
相続税の対策には、いろいろな方法がありますが、まだ相続する前、財産を残してくれる人が生前のときからできることがあります。
1.相続税について
相続税は、相続によって得た財産と、相続時精算課税の適用を受けて贈与によって取得した財産の価額の合計額から基礎控除額((3000万円+600万円×相続人の数)を引いた金額に対して課税されるものです。
・相続税の計算方法
取得金額 : 税率 : 控除額
1,000万円以下:10%:0
3,000万円以下:15%:50万円
5,000万円以下:20%:200万円
1億円以下:30%:700万円
2億円以下:40%:1,700万円
3億円以下:45%:2,700万円
6億円以下:50%:4,200万円
6億円超:55%:7,200万円
国税庁のホームページで簡単なシミュレーションの計算をすることができます。
・相続時精算課税とは
相続時精算課税を選んだ人は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から2500万円の特別控除額を受けることができます。
贈与税がかかるのは、控除額を引いた残額に対してのみになります。
2.贈与税について〜生前贈与
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から、基礎控除額の110万円を引いた残りの金額に対してかかります。もし、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません。
この制度を利用して、こまかく生前贈与をしてもらうという方法があります。
毎年110万円以下を相続する人それぞれに生前贈与してもらえば、贈与税がかかることなく、財産を分与できます。
ただし、相続発生の3年以内の贈与については、相続財産とみなされてしまい、相続税がかかってしまうおそれがあります。
また、贈与税の特別控除として、婚姻期間が20年以上ある配偶者に居住用の不動産か、居住用の不動産を取得するための現金として贈与をした場合は、2000万円まで控除を受けることができます。
3.土地がある場合〜集合住宅を建築する
土地にも建物にも、それぞれ固定資産税はかかりますが、土地のみの場合に比べて、その土地に建物が建っている場合では、最大で1/6まで固定資産税を軽減することができます。
また、現金のまま相続するよりも、不動産に変えたほうが、相続税の評価額を下げることができます。
また、アパートやマンションなどの集合住宅を建てると、建築費に対して建物の評価額がかなり安くなるので、相続税を抑えることができます。
そのほかにも、アパートやマンションなどを建てて、それを生前贈与すると、相続時精算課税によって2500万円までは特別控除を受けることができます。
さらに、集合住宅の家賃収入を、相続した人がそのまま受け取ることができるので、普通の住居より効率的に財産を贈与することになります。
4.空き家は放置しない
現在は住居などに利用していない空き家でも、所有しているだけで固定資産税がかかってきます。
また、2015年5月に施行された「空き家対策特別措置法」により、倒壊などの危険性があったり、不衛生で管理状態が悪かった場合には、「特定空家等」にみなされることがあります。
その場合、指導や勧告などが言い渡され、それに従わず改善しないで空き家を放置しておくと、固定資産税が、建物がある土地の税率より6倍の、土地のみの税率になってしまう可能性があります(住宅が建っていることに対する減額措置が適用されなくなるため)。
空き家がある場合は、何らかの対処をして、後々固定資産税が上がらないように注意しましょう。
5.現金も少し残しておく
すべてを不動産に変えて贈与したり、相続に備えるのではなく、相続税を現金で支払える程度の現金も残しておく必要があります。
不動産の相続は、相続税などを抑えるのは効果的ですが、すぐに現金化できないことや、固定資産税がかかるというデメリットもあります。
6.親の名義で家を建てて、相続する人が住む
親の名義で建てることによって、相続する際の評価額を抑えて、相続税を軽くすることができます。
また、相続する人があらかじめ親の名義の家に住んでいることで、相続する際にマイホーム特約などの特別控除を受けることもできます。
これは、住民税や所得税に関する控除なので、相続税には直接関係ありませんが、生前にできる対処法のひとつになります。
*相続する前に生前にできる対処法はたくさんあります。
もちろんすべてを実践する必要はなく、土地が余っているなら集合住宅を建てて家賃収入も得ることができますし、相続人の数が多いなら、こまめに生前贈与で少しずつ財産を分け与えることができるなど、状況に応じて可能な方法を選択してください。
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