名義が「親」の不動産を子供が「代理」で売却する場合
不動産を売却したくても何らかの事情があって自分が売買取引に参加できない場合、第三者に委任して不動産を売却してもらう場合があります。
「委任」とは、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に頼み、相手方がこれを承諾することにより成立する契約をいいます。
例えば、Aが自分の建物を、自分の代わりに代理して売るようにBに頼み、Bがこれを承諾すれば委任契約が成立したことになります。
委任に関して不動産の売却で、最も多いものは新築マンションの販売です。不動産会社(宅建業者)では業としての代理が認められています。
しかし、不動産の売買は大きな金額が動く取引ですし、代理人に委任する際は慎重な判断が求められるでしょう。
関連記事:【売却の委任】名義が違う土地や建物を代理人が売ることは可能か?
親の代理で不動産を売却するとき
たとえば親が病気や認知症になってしまい判断能力が衰えてしまった親の不動産を売却する場合はどうするかという点です。
不動産売却においては価格のみならず、売却時期や瑕疵担保などの範囲、清算金の負担の有無など、さまざまな判断が伴います。
代理ではこれらの細かいことも含めたすべての判断を代理人が行うことになります。そのため、代理による売買は、非常に慎重に行うべきものと言えるのです。
代理権はやたらと人に与えてはいけないものと理解をしておきましょう。また代理には任意代理と法定代理の2種類がある点に注意が必要です。
任意代理とは、本人の意思によって委任状を渡して代理権を与えた場合をいいます。一方で、法定代理とは法律の規定によって代理権が与えられる場合です。
法定代理の典型的なものとしては、未成年の法定代理人や成年被後見人の成年後見人が該当します。
関連記事:親の名義の不動産を売却するための手続きに必要なもの
代理権と裁判所の許可
代理権というのは本人に成り代わって判断ができる強力な権利です。そのため本人が他人に代理権を与える時点で、「この人なら大丈夫だ」という大きな判断が伴います。
本人が認知症であれば、「代理権を誰に与えるべきか」の時点で、まともな判断ができません。そのため成年被後見人は家庭裁判所から正式な選任を受けた者が法定代理人となるのです。
認知症の親の不動産を代理人として売却するには、まず親が成年被後見人となり、代理人となる子供が成年後見人として家庭裁判所から選任を受ける必要があります。単に認知症の親から委任状を受けて任意代理を称するだけでは足りません。
もし親が認知症であれば、「代理権を誰に与えるべきか」の時点で、まともな判断ができません。そのため成年被後見人は家庭裁判所から正式な選任を受けた者が法定代理人となるのです。
認知症の親の不動産を代理人として売却するには、まず親が成年被後見人となり、代理人となる子供が成年後見人として家庭裁判所から選任を受ける必要があります。
次に子供が成年後見人だからと言って、すぐさま親の不動産を売却できるわけではありません。売却にも家庭裁判所の許可が必要となります。
具体的には家庭裁判所に「居住用不動産処分許可」の申立を行います。申立には売買契約書の写しを添付することになりますので、売買契約の諸条件は全て詰めてから申立を行うことになります。
申立後、家庭裁判所の許可が下りることで、売却ができるようになります。この場合、家庭裁判所の許可の審判が確定した後において、許可決定内容と異なる契約を締結したり、内容を変更したりすることができないので、注意が必要です。
代理の売買でも専門家に相談を!
このように、成年後見人による不動産売却においても、さらに家庭裁判所の許可が必要となるのは理由があります。
それは過去に法定代理人である成年後見人が成年被後見人の財産を食い物にするような事件があったためです。
そのため裁判所の正式な選任を受けた法定代理人であっても、認知症の成年被後見人の不動産売却においては、さらに家庭裁判所の許可が必要になっています。
成年被後見人の不動産を裁判所の許可を得ないで行った場合は、その契約は無効となります。ちなみに成年後見人は、成年被後見人の不動産を売却する場合の他、賃貸や賃貸借の解除、抵当権の設定なども、全て裁判所の許可を受ける必要があります。
親の代理人として代わりに不動産を売却するにしても、うまく説明が出来なかったりして、安く売ってしまって後悔する人も多いようです。
信頼できる不動産会社を見つけ、売却における条件は共有しておくことをオススメいたします。大切な不動産を手放すのですから、慎重になるのは当たり前です。
何かしらの事情があって自分で不動産の売却ができないときに委任や代理は役立つ方法ですが、結局のところ不動産の売却は専門的な知識が必要になる取引なので専門家のアドバイスを参考にしながらリスクを回避することが求められるでしょう。
もし親の代理で不動産を売却するときには、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
関連記事:不動産売却の「委任」と「委任状」に関する基本のポイント
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